Finvoy 無料ライフプランシミュレーター
無料でシミュレーション開始
年金老後資金繰下げ受給

厚生年金の繰下げ受給:
損益分岐点は何歳か計算する

2026年3月3日 掲載 | 読了目安:約6分

この記事のポイント:年金の繰下げ受給は65歳→70歳で42%増、75歳まで延ばすと84%増になります。ただし「損益分岐点」を超えて生きることが前提。年収別・受給開始年齢別の損益分岐点を具体的に計算し、自分の状況に合った選択を解説します。

年金の繰下げ受給とは(制度の基本)

老齢厚生年金・老齢基礎年金は原則として65歳から受け取れますが、受け取り開始を遅らせる「繰下げ受給」を選ぶことができます。繰り下げた月数に応じて年金額が増額され、長生きするほど生涯受取総額が増える仕組みです。

繰下げの増額率

繰下げ受給の増額率は1ヶ月あたり0.7%です。2022年4月からは受け取り開始を最大75歳まで遅らせることができるようになりました(改正前は70歳が上限)。

受給開始年齢繰下げ月数増額率65歳月15万円の場合の受給額
65歳(繰下げなし)0ヶ月0%増15.0万円/月
66歳12ヶ月8.4%増16.3万円/月
67歳24ヶ月16.8%増17.5万円/月
68歳36ヶ月25.2%増18.8万円/月
69歳48ヶ月33.6%増20.0万円/月
70歳60ヶ月42.0%増21.3万円/月
72歳84ヶ月58.8%増23.8万円/月
75歳120ヶ月84.0%増27.6万円/月

繰上げ受給との違い

反対に、65歳より前(60〜64歳)から受け取り始める「繰上げ受給」も選択できます。繰り上げた月数に応じて1ヶ月あたり0.4%減額(2022年4月改正後)され、一度選ぶと生涯減額が続きます。早期退職後の収入確保に活用されることがありますが、長生きするほど不利になるため慎重な判断が必要です。

繰下げ受給の増額率と損益分岐点の計算

損益分岐点とは、「65歳から受け取り始めた場合の生涯累計受取額」と「繰り下げた後の生涯累計受取額」が逆転する年齢です。損益分岐点を超えて生きれば繰下げが「得」になります。

損益分岐点の計算式(65歳・月15万円を例に)

【70歳繰下げ(月21.3万円)の損益分岐点】

65歳〜70歳の5年間に受け取れなかった累計額:
 15万円 × 12ヶ月 × 5年 = 900万円

70歳以降に増加する月額:
 21.3万円 − 15万円 = 6.3万円/月

損益分岐点までの期間:
 900万円 ÷ 6.3万円 = 約142.8ヶ月 ≒ 約11年11ヶ月

損益分岐点の年齢:70歳 + 約12年 = 約82歳

75歳繰下げ(月27.6万円)の損益分岐点

65歳〜75歳の10年間に受け取れなかった累計額:
 15万円 × 12ヶ月 × 10年 = 1,800万円

75歳以降に増加する月額:
 27.6万円 − 15万円 = 12.6万円/月

損益分岐点までの期間:
 1,800万円 ÷ 12.6万円 = 約142.8ヶ月 ≒ 約11年11ヶ月

損益分岐点の年齢:75歳 + 約12年 = 約87歳

※税金・社会保険料の変動を考慮しない単純計算です。実際には所得税・住民税・介護保険料等が増額分にかかります。

【重要】手取りベースでは損益分岐点がさらに遅くなります

年金額が増えると、所得税・住民税だけでなく、後期高齢者医療保険料や介護保険料も連動して上昇します。額面が42%増えても手取りの増加率はそれより低くなるため、実質的な損益分岐点は額面計算より2〜3年程度遅くなります。

受給開始年齢別・損益分岐点一覧

受給開始年齢増額率月15万円の受給額損益分岐点(概算)
65歳0%15.0万円—(基準)
66歳8.4%増16.3万円約78歳
67歳16.8%増17.5万円約79歳
68歳25.2%増18.8万円約80歳
69歳33.6%増20.0万円約81歳
70歳42.0%増21.3万円約82歳
72歳58.8%増23.8万円約84歳
75歳84.0%増27.6万円約87歳

参照すべきは「0歳児の平均寿命」ではなく、65歳時点の平均余命です。65歳まで生存した男性はその後平均約20年(85歳まで)、女性は約25年(90歳まで)生きると推計されており、65歳の男性の約半数は85歳以上、女性の約半数は90歳以上まで存命する計算になります。0歳児の平均寿命(男性約82歳)を基準にすると繰下げのメリットを過小評価する恐れがある点に注意してください。これを踏まえると、統計的には繰下げ受給は「得」になる可能性が高い選択肢です。

「平均寿命」に惑わされない:現在65歳の方はすでに「0歳〜65歳までの死亡リスク」を乗り越えています。繰下げ受給は「長生きしたときの保険」です。損益分岐点を0歳ベースの平均寿命で考えるのではなく、自身の健康状態と「資金が枯渇するリスク(長生きリスク)」を天秤にかけて判断しましょう。

年収別・損益分岐点シミュレーション

年金受給額は現役時代の年収・加入期間によって異なります。年収別の65歳時点での年金受給額(概算)と、70歳繰下げの損益分岐点を示します。

現役時代の年収65歳時の年金(月額目安)70歳繰下げ後の月額損益分岐点(70歳繰下げ)
年収300万円・40年加入約12〜13万円約17〜18万円約82歳
年収500万円・40年加入約16〜18万円約23〜26万円約82歳
年収700万円・40年加入約20〜23万円約28〜33万円約82歳

損益分岐点の年齢は年収に関わらず約82歳前後になります(70歳繰下げの場合)。これは増額率が一定(0.7%/月)であるため、受給額の絶対額によらず損益分岐点の計算構造が同じになるためです。

実務上の注意点:年金額は物価スライドで毎年変動するため、実際の損益分岐点は多少前後します。また税金(所得税・住民税)や社会保険料(後期高齢者医療保険・介護保険)の増加も考慮すると、手取り額は額面より少なくなります。

繰下げ受給が有利なケース・不利なケース

繰下げ受給は万人に有利なわけではありません。自分の状況に応じて判断することが重要です。

繰下げ受給が有利なケース

繰下げ受給が不利なケース

要注意:配偶者への加給年金と繰下げ受給
厚生年金の加給年金(配偶者が65歳未満で生計維持している場合に加算・年額約41万円(2026年度))は、繰下げ期間中は受け取ることができません。加給年金の受け取り期間が長い場合、繰下げのメリットが大幅に減少または消滅するケースがあります。加給年金がある方は必ず試算してから判断してください。

在職老齢年金との関係(2022年以降の改正)

60〜64歳で厚生年金に加入しながら働く場合に年金が一部または全額支給停止になる「在職老齢年金」制度は、2022年4月に基準額が引き上げられました。

年齢支給停止となる基準(2022年4月〜)改正前の基準
60〜64歳賃金+年金の合計が月50万円超月28万円超
65歳以上賃金+年金の合計が月50万円超月47万円超

改正により、特に60〜64歳の在職中の年金停止を受ける人が大幅に減りました。月収が高い方でも、賃金と年金の合計が月50万円以下であれば全額受け取れます。なお65歳以降も就労しながら年金を受け取る場合は、繰下げせずに65歳から受け取り始めた方が実質的に有利になるケースも多くあります。

在職老齢年金と繰下げの組み合わせ:65歳以降も高収入で就労する予定がある場合、年金を受け取っても一部停止されるなら「どうせ止まるなら繰り下げて増やした方がいい」という考え方もあります。ただし停止分は後から増額されるため(在職定時改定)、一概に繰下げが有利とは言えません。個別に試算することをお勧めします。

Finvoyで自分の繰下げ受給効果を試算

年金の繰下げ受給が得かどうかは、現役時代の年収・配偶者の有無・健康状態・退職金・老後の生活費など、多くの要素によって変わります。「65歳から受け取るか、70歳まで待つか」の判断は、ライフプラン全体を踏まえた上で行うことが重要です。

Finvoyのライフプランシミュレーターでは、年金の受給開始年齢を変更して老後の資産推移・収支バランスがどう変わるかをグラフで確認できます。加給年金・繰下げ・在職老齢年金の組み合わせを試算して、自分に最適な受給戦略を見つけてみてください。

年金繰下げ受給の効果を今すぐ無料でシミュレーション

Finvoyでシミュレーションを始める

まとめ

関連コラム

老後2000万円問題とは? インフレ時代の老後資金計画 iDeCoとNISAどちらを優先すべき?

← コラム一覧へ戻る